オタワの攻防 (2007/05/04)
「オタワの攻防」
「カナダでは総選挙は春に行われるだろうと言われていたが、もう5月。 この分じゃ夏かな? それとも来年か」
「数週間前までは、保守党の人気が断然ライバルの自由党をリードしていて、あの時点で選挙をやれば、保守党も過半数が取れると思った。 でもそれではあまりにも見え見えなので、ハーパー首相も、「抜き打ち選挙はやりません」と白を切っていた。 そう言いながら、保守党は金に飽かせてオタワに大掛かりな選挙対策大本営を設営している。 『さては選挙間近し』とメディアは睨んでいるのだが、この2週間ばかり、保守党の人気が下がってきた」
「それでも支持率は両党とも今30%前後だから、どちらが勝っても少数派政権になってしまう。 だから野党も国民も選挙を望んでいない」
「なぜ保守政権の人気が下がったのだろう」
「一つには、保守党内閣の政策が、保守から中道に傾いて、自由党とあまり変わらなくなったからだと思う。 この前の予算にしても、『あれじゃ自由党の予算じゃないか』と評されるほど、右から左に寄ってきたからね。 それに、去年の秋、『インカムトラストの利益には課税しない』という選挙時の公約をあえて破って課税することにした。 フレアティ蔵相としては『国のため』と英断に踏み切ったのだが、本来の保守党を支える階層には、マイナスの余韻が響いている。 それに、アフガニスタンのカナダ軍派遣をめぐる与野党間の不信と論争。 そして地球温暖化に対する保守党政権の対策が中途半端なこと。 つまりカナダの前政権が調印した『京都議定書』を反故にして、カナダ独自の政策を打ち出そうというのだが、それは国際条約を踏みにじるものだと、内外の圧力が高まっている」
「でも自由党に政権交替の構えが出来ているのかね」
「そこが問題だ。 自由党の支持が一時的に減ったのは、ディオン新党首の統率力とコミュニケーションの能力に国民が十分得心していなかった。 しかしディオンの人気も一応落ちるところまで落ちて、これからは上向きの一方だと思う。 それに大事な生命線は資金だ。 昔は自由党といえば金に不足はなかったのだが、今の資金集めの実績は、保守党の十分の一、NDP新民主党の半分なのだから目も当てられない。 それに先の党首選挙で、立候補したリーダー達は、それぞれ借金をかかえている。 そういうこともあって、今の時点での総選挙は勘弁してほしいところだろう」
「しかし選挙は遅かれ早かれやってくる。 何も争点がなくても、そして不信任で倒閣が起こらない限り、2009年の秋に、自動的に選挙が行われるからね」
「アフガニスタンがハーパー内閣の命取になる可能性はあるのかな?」
「今焦眉の問題は、現地のカナダ軍が捕らえたタリバンやその同調者をアフガニスタン政府当局に渡すことだが、その容疑者がアフガニスタン当局によって拷問や非人道的な取扱いを受けるのではないかということが懸念される。 元々は自由党政権の時に始まったカナダ軍派兵だが、今は自由党も含めて野党全部が早期撤兵を要求している。 ハーパー内閣はそれに抵抗しているわけだ。 これが引き金となって不信任にもつれこむ可能性はある。 しかしその蓋然性は少ない。 将来のシナリオはどうなるかな」
「地球温暖化については、元々懐疑的だったハーパー首相も今や前言を翻すことを余儀なくされているが、それでもあくまでアルバータのエネルギー産業を保護して、環境対策は二の次という姿勢だ。 これが不信任につながる見込みは十分ある。 それに銃砲気規制にしても、声高に「法と秩序」を強調するのが保守党の立場だ。 一寸先のことはやはり闇のうちというところだね」
(07/05/04)
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