老後を海外で(2006/08/06)
イノさんへ
カナダへの移住は、4000万円の金をカナダ政府に預託して5年間寝かせれば可能なのですか。 あれは20年ぐらい前だったでしょうか。 東京都23区内に、たとえどんな小さな土地建物でも、一つ持っていれば、当時でも億万長者と言われたものです。 今はバブルも終わり、時世も変わりましたから、そういう喩えは通ずるかどうか知りませんが、少なくとも、東京都内には億万長者が何百万人といたわけです。 そういう人には、墓場までその財産を持っていけるわけではありませんから、この世で有効に使うためには、4000万円ぐらい「こまいこまい」と言えるのかもしれませんね。 日本も住みよい国ですが、老後を海外でという方には、カナダも悪くありませんね。
先日のお便りで、日本も道徳観念が堕ちたという事例をお伝えいただきましたが、狭い歩道を3人ばかりの若い男女が横並びになって歩くのはカナダも同じです。 若い人には年寄りがインビジブル、目に入らないのでしょうね。 アメリカの社会心理学者が老人に変装して実験してみたところ、人込みの中にいても、殆んどの人が老人の姿に気がつかないそうです。 タクシーも止まってくれない。 教会でさえ若い人達が気をつかってくれないというのは、アメリカのようなフレンドリーな社会では考えられないことのように思えるのですが、事実そうなんでしょうから考えさせられます。
しかし5年前東京に帰った時、近所の多摩川台公園で朝6時半から行われるラジオ体操に出てみました。 すると、その時間に道で行き会う出勤の人達の中には、「お早うございます」と声をかけて駅に急ぎ足で向かう人もいました。
私もアメリカとイギリスに住んだ後、カナダに移住して来たのですが、英米の人にくらべて特にフレンドリーという印象はありませんでした。 むしろ英米人は知らない人に対してはフレンドリーですが、知り合いの間ではクールという感じがありました。 日本人は、知らない人に対しては概して不親切ですが、知り合いにはサービスこれつとめます。 カナダ人は、英米人と日本人の中間だなと思ったことでした。
例外は、私が今住んでいるバンクーバーのウェストエンドでしょうか。 ここはダウンタウンの中心で、商店街とアパート群がミックスしているのですが、そこで出会う人には、オーバーリー フレンドリーというわけではありませんが、他人に気をつかってくれる雰囲気があります。 道路でも商店でも、「エクスキューズミー」「アイムソーリー」「サンキュー」「ウェルカム」という声を頻繁に聞き、ドアを開けて待ってくれる人も多いのです。
そして目抜きの通りでは、老人、車椅子、一見貧しそうにみえる人も結構多い。 勿論圧倒的に多いのは、手足のすらりと伸びたヤッピー族ですが、中には男同士手をつなぐゲイも見かけます。 通りで耳にする言葉も、英語以外の聞きなれない外国語が漂ってきますが、その中で特に耳に響くのが若い日本女性の日本語。 大和撫子は大抵二人連れで歩いていますが、ワーキングホリデーの情報交換でもしているのでしょうか。
市の方針として、この地区では、貧富や年齢の違いを意図的にミックスさせようとしているのかなと思うくらいです。 要するに弱い者にとって住みやすいコミュニティになっているのですね。 こういうのをシビライズドな社会というのでしょうか。
私は以前ロンドンに住んでいたことがあるのですが、あの「外国人嫌い」の英国人の間にあって、ロンドンで暮らすノウハウを一旦心得てしまえば、実に住みやすい所でした。 このバンクーバーのウェストエンドの住み心地も、ロンドン以来のものだと思っているところです。
気候がいい、景色がいい、病院がよくて、買物にも便利というのは大事なことですが、袖振り合う未知の人同士ちょっと声をかけ合い、微笑み返すのも、ストレスが減り、心やすらかな生き方につながるのではないかと思います。 イノさんも海外で老後をとお考えなら、バンクーバーのウェストエンドも候補地の一つにいかがでしょうか。
(06/08/06)

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