Saturday, July 29, 2006

花火(3006/07/27)

今夜は、バンクーバーの花火。 アパートから一歩踏み出すと、目の前は海ですが、ちょうど真ん前のあたりに、数日前から、ミニ航空母艦のような長い舞台が浮かんでいます。 今夜10時になると、このステージから花火が次々に放たれ、30分間続きます。

先ほど午後4時半頃街頭に出てみたら、毛布と弁当を抱えた家族連れが、もう海岸に向かって歩いていました。 この辺一帯は、7時から11時半まで、自動車も通行禁止になり、歩行者で埋まります。

この花火は2週間に4回行われるのですが、太陽がまだ中天高く輝いている頃から人が詰めかけ始め、子供達は夜10時まで、海岸に毛布を拡げ仮眠します。

夏の花火は世界中どこでも同じ様な風景でしょうが、バンクーバーの市民達も、この時ばかりは童心にかえって、夏祭りを祝います。

バンクーバーの花火のコストは300万ドル。 そのうち花火そのもののコストは120万ドルだそうです。 ということは、交通整理やセキュリティ、多数の仮設トイレの費用などにかかるのでしょう。 

300万ドルの費用は、香港上海銀行(HSBC)が出し、後電話会社も後援に名を連ねています。

私も今まで花火を見物に出かけたことは殆んどなかったのですが、折角目の前で展開されるのですし、それに集まった遊民の賑わいにも触れてみたいので、海辺に出かけました。

この辺、今は9時ぐらいに薄暮になりますが、私は10時15分前に出かけました。 すっかり夜のとばりがおりていましたが、それでも沖合いのミニ空母のまわりには、ヨットやクルーザーが数え切れないほど泊まっているのが見えます。 

海岸には何万という人達が既に陣取っていましたが、戦略的なベンチに腰掛けているのは、日中まだ明るい時にやって来た心がけのいい人達でしょう。 オシッコの近い私にとって気になるのはトイレの問題ですが、それも多数の仮設トイレが方々に用意されています。

海に面した高級アパートには臨時の柵が設けられ、警備会社のガードらしき男性が見張っています。 公園の花や植え込みのまわりにも頑丈な金網が張りめぐらされ、花泥棒を警戒しています。 パトカーや救急車が何台も、赤や青のライトを点滅させて待機しています。

小さな子供達は、この晩に限って売り出される照明つきの玩具を手に手に振り回しながら、楽しそうに駆け回っていますが、若者の群れの間を、車椅子の人達も通り抜けています。

私の今までの花火体験といえば、遠い夜空にホワッと浮かぶ赤い傘を建物の間から見るだけ。 そして忘れた頃に「ポン」という響が流れてくるのですが、今夜はかぶり付きの場所です。

東京では、両国の川開きに、隅田川の両岸から江戸っ子が「鍵屋!」「玉屋!」と歓声をあげると聞いたのですが、屋台舟から眺めるのも風情があって風流な夕涼みでしょうね。

10時直前に秒読みが始まりました。 そして目の前のミニ空母から、スルスルと火が尾をひいて上空に飛ぶと、太鼓の皮が破れんばかりの音響で、炸裂します。 全盲の人も、このどよめきと腹にズドンと響く爆音を楽しむために、この海岸に来ているそうです。 そして機関銃のような爆発が続き、数分おきに空が赤く染まる、光と音の饗宴が繰り返されます。 

なるほどこの迫力なら遥々遠くから歩いてやってくる皆さんの気持にも納得。 その晩はイタリアがテーマでしたが、スピーカーの音楽が変わると、目の前の数人の人達がスクッと立ち上がります。 イタリアの国歌だったのかもしれません。 観客は歓声と拍手を惜しみなく送ります。 沖合いの浮き舞台の花火師には聞こえないでしょうが、私も手を叩きました。 

そして、絢爛たる夜の祭典が、エルガーの「威風堂々」の音楽とともにクライマックスに達すると、私の気分もさらに高まってきました。 時計が無くても、なるほどこれがフィナーレなのだと実感します。 そして10時半になると、夜空は再び黒く静かになり、観衆は一斉に腰を上げて帰路につき始めました。 

世界の戦乱の災禍も、この一夜だけは暫し忘れて、海岸に座り込んで、音と光のシンフォニーに酔ったことでした。 三日後は中国が主題の花火。 来週はチェコスロバキアと聞きましたが、これは二つの国。 東欧の二つの国が協力して演出するのでしょうか。 私もまた出向いて参りましょう。

(06/07/27) www.shigematsu.com

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