Monday, June 13, 2005

象牙鍵盤(00-1)

カナダとアメリカの5千キロの国境はほぼ一直線。 数キロごとに検問所があり、「国籍は?目的は?滞在日数は?」と訊かれ、時には旅券を、そして荷物をみせなければなりません。 アメリカ側の国境はカナダからの不法入国に厳戒態勢をとっているので、アラブ系でフランス語の訛りがあったりするとたいへん。 訛りは関所の手形だといわれますが、イギリスアクセントでも油を絞られることがあるので、南へ向かう国境は車の渋滞がつづきます。 きびしい点ではカナダ側も同じで、古典的楽器も入国拒否の理由になります。 最近ナイアガラの国境で、アメリカからのピアノが税関で拒否されました。正確には1827年製のフォルテピアノですが、鍵盤に象牙が使ってあります。 この楽器をトロントのCBCのグレングールド スタジオに持ちこんで録音しようとしたのは、ベルギーのラジオプロデユーサーでピアニストのUvinさんと、ロスアンゼルスのカリフォルニア大学のBeghin教授。 しかし税関では英国製フォルテピアノの象牙の鍵盤をみるなり、国際法の附則に違反すると通関を拒否。 そこで二人はカナダの野生動植物保護局に特例をはかってもらうよう訴え、そのフォルテピアノの所有主であるコーネル大学や関係官庁にも電話で連絡。 CBCの弁護士も陳情に動いたのですが、野生動植物保護局は、規則一点張り。 二人はやむなく時価370万円のフォルテピアノを国境近くのモテルに預けたまま、トロントに向かいました。 税関のスポークスマンは、「非は保護局の官僚主義にあり」と、責任を押し付けます。 一方保護局の方では「もし二人が適切な書類を揃えて申請すれば数日で許可を出したのに」という説明。 実はもう1台ウィーン製の19世紀フォルテピアノがあったのですが、この方は材料が骨だったため通関ができました。 こうして一応予定の半分は録音できたのですが、プロデューサーと教授は、カナダの遵法精神に深く印象づけられたものの、途方にくれた表情をしていたそうです。

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