Wednesday, February 08, 2006

案じられる新首相の行く手(06-02-08)

「スティーブン ハーパーの保守党内閣は、2006年2月6日に船出したが、『天気晴朗なれども波高し』の感じがするなあ。 ハーパー首相は、初日から時限爆弾を抱え込んだ恰好になっているからね」 

「まず、独断で敵将を自分の陣営に引き込んで、しかも枢要な閣僚ポストを与えたことだ。 デービッド エマソンは、もともとマーティン前首相に見込まれて、自由党内閣の産業大臣として政界入りをした人だ。 履歴書をみれば、ブリティッシュ コロンビアで数々の要職を経験した有能の士であることは判る。 しかし自由党議員としてバンクーバーで再選されながら、ハーパーさんから、『保守党の通商大臣にならないか』という電話を受けると、すぐ変心。 自由党の赤い帽子を保守党の青に切り替えて、6日朝総督官邸の就任宣誓式に姿を現わしたから、待ち構えていたプレスも唖然としてしまった」

「まあ、カナダの政界では、自由党から保守党へ、またその逆と、馬を途中で乗り換える政治家は珍しくないのだが、ハーパーさんは、そういう動きを、『道義も倫理もない輩』と非難していた。 しかし、今度やったことは、それと全く同じことだ。 ハーパーさんの道義観も、時と場合によって、カメレオンのように自由に変化することが今回判明した」 

「さらに、この前の選挙で、保守党の選挙参謀は努めたが、自分では立候補しようとしなかったモントリオールのマイクル フォーティエを、いきなり公共事業大臣に据えたからね。 この公共事業省は、政府の中でも最も金を沢山扱う役所だ。 それに自由党政権の命取りとなった例のスキャンダル事件の舞台でもあった所だ。 それを選りも選って、自分の親しいマーチャントバンカーに任せるというのだから、みな目を剥いた」

「モントリオールでは保守党は全員落選したが、それでも候補者の中には、かねてから地域社会に貢献してきた立派な人物もいるはず。 そうした人達を差し置いて、自分の友人に花をもたせた。 それにフォーティエは議席の無い丸腰の身だから、急遽上院議員に任命して、内閣に滑り込ませた」

「でもハーパーさんは、かねがね上院議員の任命制に反対していたじゃないか。 それが、初日に、自らの主張を裏返して、手品のように、シルクハットから鳩を取り出してみせたのだから、みなアッと仰天したのも無利はない」

「これでは、今まで20年間、リフォームからアライアンス、それに進歩保守党との合併と、営々保守陣営の党勢拡大に努めてきた陣笠議員や代議員には、何のコンサルテーションも無かったわけか。 裏切られた功労議員達の心中やいかにと、察せざるを得ないね」 

「今はまだハネムーンの時期だから、内心仮に吐き気を催していても、ベテラン党員や領袖の議員達も、ケセラセラと哲学者然としたポーズで、一応口をつぐんではいるがね」

「日本の政情を研究したカナダの政治学者によると、『日本だったら、幾ら小泉さんでも、長老や重臣に相談しないで大事な国事を独断で実行することはできないだろう。 ところがカナダではそれが通用するのだ。 カナダの首相は、独裁君主に近い権限を持っているからね』ということだ」 

「孤高をもって任ずるたぐい稀な理論家ハーパーさんのことだ。 まわりには非情にみえることでも、ご本人としては、ごく自然なポーズであり、スタンスなのかもしれないね。 しかしレッドネックのカウボーイ議員達をいつまでそうしたスタイルで御していけるかどうかとなると疑問だな。 しかも、第一日から、ダブルスタンダードの人事を敢行し、党内に波乱の種を何粒か蒔いてしまった。 だから『天気晴朗なれども波高し』なんだよ。 カナダの政界も「一寸先は闇」であることにはかわりはないからね」

(06-02-08)  

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