Wednesday, October 24, 2007

石油は誰のもの (2007/10/24)

『石油は誰のもの』

「世界に散在する石油と天然ガス。 カナダにも、アルバータをはじめ、ニューファンドランド/ラブラドール、ノバスコシアの沖合いに眠る海底油田など、これからの開発が待たれている。 石油価格が高騰すれば、開発にも勢い力がはいる。 しかしこれらの地下や海底に眠るエネルギー資源は一体誰のものか」

「それはそこに住む住民のものだろう」

「自明の理のようだが、その所有権をめぐっては、カナダでも昔から憲法を踏まえた弁論が法廷で交わされてきた。 強大な資金力とテクノロジーをもつ石油資本だが、最近の産油地のナショナリズムには一目置くようになってきている。アルバータでは、元々石油資本を厚遇してきたが、業界に近かったクライン前州首相が引退し、ステルマック州首相が新たに登場すると、あらためて州の取り前を見直そうという動きが出てきた。 アルバータ州政府の委嘱した調査パネルによると、アルバータ州民は正当な分け前を享受していないというのだ。 しかしこれには石油資本も反撥しており、将来の開発投資も手控えるかもしれないと脅しをちらつかせている」

「しかしテキサス州が石油資本から受け取る分け前は65%であるのに対し、アルバータ州の取り前は44%に過ぎないそうじゃないか」 

「それは通常の石油のケース。 オイルサンドや重油になると、アルバータは、ロシア、ノルウェイ、カリフォルニア、ベネズエラの後塵を拝し、さらに低い割合で甘んじている。 昨年アルバータ州は120億ドルの収入が石油、天然ガスのロイヤルティ、税収などからあったが、国際的な物指しでみるとアルバータ州が貰うべき分を20億ドル損しているのだそうだ。 アルバータも多分来年の春には選挙があるだろう。 そうなるとニューファンドランド/ラブラドールでウィリアムス州首相が強烈なナショナリズムを発揮して、州民の圧倒的な共感を呼び起こしたことが鏡になる。 ナイスガイのイメージをもつアルバータのステルマック州首相が、コワモテで石油資本に対決することができるか。 もしオイルサンドの開発がスローダウンすれば、そこに働く従業員や関連産業の不安をかきたてることになり、そうしたことへの配慮も政治家の仕事。 そこで石油資本は従業員をバスでエドモントンの州議事堂に送り込み、ゆさぶりをかけている」

「ニューファンドランド/ラブラドールでも同じ様な綱引きがあったのではないか。 石油資本はウィリアムス州首相の要求に「ノーウェイ」と一蹴し退席したが、一年後にはまたテーブルに戻ってきて歩み寄りの姿勢をみせている」

「しかしアルバータのオイルサンドはサウジアラビアに匹敵する規模だ。 もっともそれを採取し精製する課題は残っているが、石油資本の膨大な資金力とテクノロジーが不可欠になる」

「10年前は石油の価格も安かった。 だからオイルサンドの開発を進めるためにも低いロイヤルティが必要だったが、今は違う。 価格も空前のレベルに達し、開発にも旨味が出てきた。  それに世界の産油国が国有化を進める中で、アルバータだけはまだ民間投資を歓迎している。 世界の耳目が従来の産油国からアルバータに集まりつつあるのもうべなるかなと言えるだろう」

(2007/10/24)

Friday, October 19, 2007

スローンスピーチ (2007/10/19)

『スローンスピーチ』

「10月も半ばを過ぎ、オタワに霜がおりようとしている時季になって、やっと議員達も夏休みから戻ってきて、議事堂も再開したね」

「夏休みと言っても、議員達は日光浴をしていたわけじゃない。 選挙区で有権者を招いてバーベキューを振舞ったり、次の総選挙に備えて票固めに余念がなく結構忙しかった」

「議会再開は、恒例によって華麗なスローン スピーチの行事。 カナダの元首はエリザベス女王だが、その代理として女王の椅子にすわるのが総督。 今の総督は、ハイチ生まれの黒人女性 ミカエル ジョンさんだが、議場に用意された女王の玉座、すなわちスローンにすわり、隣にフランス出身の夫君をはべらせて、政府が用意した施政方針を読み上げる。 象徴的な意味合いの強い儀式だが、内容は今後の政府の政策の大綱を示す概論的なもの。 それを書いたハーパー首相をはじめ、閣僚や政府要人、それに上院下院の議員達、そして内外の貴顕紳士淑女が並ぶ中、英仏両語で朗読される」

「総督のまん前にすわってサンタクロースのような衣裳を着た男女のグループは?」

「あれは最高裁判所の判事達。 今年のスローンスピーチは39分だったが、テレビで全国に中継された。 ハーパー首相のアイディアだろうが、プライムタイムに放映するのは初めてのことだそうだ」

「今回は厳正な『法と秩序』の確立を先ず掲げていたが、アフガニスタン、環境対策、銃砲規制、減税など、かねての保守党の主張を追認した形だ」

「もしこれに野党3党がこぞって反対すれば、即解散、総選挙になるが、州レベルでもニユーファンドランドやオンタリオの選挙があったばかり。 サスカチュワンも選挙を控えている。 国民にしてみれば『またか』という感じかもしれない」

「国政をあずかる保守党もつい最近まで支持率は野党自由党と拮抗していたが、ここへきて自由党より優位になってきた。 瞬間的に40%をマークしたが、40%なら、多数派政権が可能になる。 そうなれば直ぐにでも総選挙をしたい所だ。 だが今はまだ慎重に構えている。 時機の熟すのを待っているのかな」

「このスローンスピーチには、BQブロックケベコアもNDP新民主党も不信任案を出す姿勢だが、もし自由党が合流すれば即時解散総選挙という筋書きになる。 しかし自由党はケベックの補欠選挙の惨敗で危機的状況にある。 加えて元首相のジャン クレチアンが内紛に火に油を注ぐようなメモワールを出版して、ただでさえ痛みつけられている自由党の傷をさらにえぐってくれた。 とても総選挙どころではない」

「だからディオン自由党党首は、BQ、NDPの不信任案に同調しないで、スローンスピーチには勿論批判的だが、あえて『棄権』することによって当面の解散を回避しようとしている。 党の立て直しを優先し、あわせて自己の信を問いたい考えなのだろう」

「棄権は苦肉の途だが、保守党にもそういう先例がないわけではない。 しかし今は保守党にとってどう転んでも『勝ち』という『ウィンウィン』の状況だ。 とりあえずは解散も先送りとなるが、いつ解散になってもおかしくない状況だ。 『今国民は総選挙を望んでいない』というディオン党首の言葉は、(自由党に投票する人は少ない)と解釈すべきだろう」

「オタワの暴風雨警報は当分解除される見込みはなさそうだな」

(2007/10/19)

Monday, October 08, 2007

カナダ中央銀行の宿題` (2007/10/08)

「バンク オブ カナダの次の総裁に、連邦政府は マーク カーニー を任命したが」

「現総裁の デービッド ドッジは、来年2月に、7年の任期を終えて引退するが、後任の人選に満足しているようだ」

「カーニー次期総裁は、前にバンクの副総裁をつとめたことがあり、その後財務省に転じて主要なポストを歴任している。 その前はアメリカの投資銀行で13年経験を積んでいるから、国際金融にも明るい。 加えて ハーバード、オックスフォードでの経済専攻という学歴も、ノースウェスト準州出身のカーニーに後光を添えるもの。 42歳といえばまだ青年と言えるかもしれないが、ジョー クラークが総理大臣になったのも39歳の時。 カナダの大胆な若手起用が印象的だ」

「カナダドルはこれからも高騰を続けるだろうが、それに伴う製造業や森林関連、観光産業への深刻な影響が、中央銀行としては課せられたチャレンジだ。 それにコマーシャルペーパーを含めた複雑な国際金融市場の動きに対処するためにも、新総裁の経験と手腕が期待されている」

「カナダドルも先週ジャンプして米ドルにして $1.02 を上回る線に達したが、日本円で \119。 \100はカナダドルの84セントだった」

「それに 9月の失業率は 5.9%と 33年ぶりの低水準。 アメリカの 4.7%よりは高いが、アメリカが失業増加の傾向にあるのに対し、カナダは逆の方向に動いている」

「好況に沸くカナダ西部では 3.6%だった。 製造業の不振をかこつオンタリオでも雇用は増えている。 伝統的に失業の多い大西洋沿岸諸州でも 8%と改善されてきている」

「それは結構だが、インフレの気配はやまないようだね。 バンク オブ カナダとしてはインフレを 2% に抑えたいところだが、このところ賃金の上昇が 4% を超えている。 雇用者としては頭の痛いところだが、人手が足りないのが実情だ。 それがインフレに火をつけることにならなければよいがという懸念の声も聞こえてくる」

(2007/10/08)