Sunday, December 30, 2007

少数民族の進出 (2007/12/30)

「よくカナダ人が『カナダの様子も50年前にくらべると様変わりだ』と言うが、それは世界中どこに居たって同じことだろう」 

「私が移住してきたのは1974年だから、30年以上昔になるが、1960年代にカナダの移住政策が大きく変わったおかげで移住できたようなものだ。 それまではヨーロッパからの移民が優先的に考慮されていたから、結果的には白人社会が構成されていた。 それがピアソン内閣の時代になってヨーロッパ以外の地域からの移民にも門戸が開かれ、両手を拡げて受け入れるようになった。 それまでは、カナダに既に居住している人との血縁関係が移住の条件として重視されていたが、それが一転して、別に親戚がなくても資格やスキルがあれば受け入れるメリットシステムになった」

「だから今では150の国からやってきた移民達が、200の言語を使って生きているわけだ。 つまり多様民族による多様文化社会が実現したのだが、それが今でも絶えず国の表情を変えつつある」

「それにしても、最近はアラブ系と南アジア系の進出が著しいね。 30年前はアラブ系とユダヤ系はそれぞれ20万ずつで同じだったのだが、今はアラブ系の方が3倍多い。 南アジア系はというと、インド、パキスタン、スリランカが主になるが、特にパンジャブのシークの人達の政治力には驚かされる」

「あの人達はターバンを巻いて髭面だから目立つが、団結力がすごい。 オタワの議会でも訛りのある褐色の議員達がよく発言している。 どうして英語がパーフェクトとは言えないのに、議員に当選できるのだろう?」

「カナダ下院の議席数は308だが、そのうち41人が外国生まれだ。 これは13%に相当する。 ところがお隣のアメリカも移民の国だというのに、ワシントンの議会が上下院両方の議席を合わせても535で、その中に占める外国生まれは8人だけだ。 これだけみても、カナダの移住政策が、アメリカに比べて格段に効果をあげていることがわかる」 

「しかし南アジア系の議員が多いということは、立候補の段階から特異な原因があるのではないか。 カナダでは各政党が選挙区毎に候補者を決めるのは当然だが、その候補者は党員の投票で決まる。 では誰が党員かというと、数ドル出せば誰でもインスタントに党員になれる。 別にカナダ市民権が無くても構わない。 だから仲間を大勢集めて急造の党員に仕立てて、後は数で決めるのだから、同じ色の人が集まれば、その中から自分達の推す候補者を選べるわけだ。 そして選挙の際は、一般の有権者も、候補者個人の人気よりは支持する政党によって投票するから、立候補の段階で勝負が半分決まったようなもの。 だから特定のグループが集まればその候補者が当選する確率が高いといえよう」

「カナダは随分積極的に少数民族の顔を表に出そうとしているんだね。 公務員でも大学でもマイノリティの進出を推し進めようとしているが、そのうちカナダの外交もノンホワイトの大使が国際舞台で重要な働きをするようになるだろう」

(2007/12/30)

Saturday, December 15, 2007

オタワのドラマ第2幕 (2007/12/15)

(2007/12/15)

『オタワのドラマACT2』

「カールハインツ シュライバーとブライアン マウルーニーの二人が対決する第ニ幕は、議会で顔をあわせる真剣勝負とはならなかったが、お互いに『嘘つき』呼ばわりを繰り返していたなあ。 そのためか、疑惑の解明とは逆に、ますます混迷の度を深めることになった。 判定は来年まで持ち越すことになったようだ」

「シュライバーはドイツ訛りの英語を話すカナダ人で、国際的にエアバスや戦車を扱う73歳の政商。 しかしドイツ政府は、賄賂や脱税、詐欺の疑惑で追求しているのだが、8年以上も独加政府の司直の手をかわし、未だにカナダからドイツへの身柄引き渡しが実現していない。 シュライバーとしては手錠をはめられたままドイツへ行くことは何としても阻止したいところ。 そこでマウルーニーとの金の絡んだ繋がりをほのめかして、カナダ議会やメディアの関心をそそり、日一日と引き延ばし作戦をはかり、少なくともクリスマスと新年はオタワの豪邸で迎えることになりそうだ」

「一方68歳のマウルーニーは、カナダの首相を9年間務めた千両役者。 議会で調査を進める倫理委員会の席でも、名優としての期待を裏切らない見得を切ってみせてくれた。 ケベックの田舎の鉱山町で電気技術者の家に育ったマウルーニーは、Fザビエル大学時代から政党活動に打ち込み、三十代の若さで進歩保守党党首選挙に挑戦。 その時一旦はジョー クラークに敗れたが、下積みはいやだと、米企業のカナダ法人の社長になる。 しかしシュライバー等の支持を得て、再び数年後に挑戦。 そしてクラークを降して党首の座に。 翌1983年には首相の印綬を帯びたのだが、その時の前首相は自由党のジョン ターナー。 ターナーはピエール トルドーから総理を引き継いだばかりだったが、その引継ぎ人事を巡って、党首討論の際、マウルーニーは相手をトコトンまで追い詰め容赦しなかった。 『武士の情』というか、相手に一片の雅量もみせなかったマウルーニーの独善的な攻撃が印象に残っている」

「今度のシュライバーに対する非難にしても、千ドル札の詰まった封筒を、モントリオール、ニューヨーク、チューリッヒのホテルで受取っておきながら、5年間は沈黙。 そしてそれを銀行に預金もせず、現金のまま金庫にしまって置き、関連書類も破棄して無いというのだから、、摩訶不思議だ」

「その間、クレチアン自由党政府に対し、名誉毀損を理由に1,500万ドルの賠償を訴え、、自由党政府もその言い分を認めて、210万ドルをマウルーニーに支払っている。 自由党政府の方にも瑕疵があったものの、マウルーニーの『名誉毀損の訴え』は結局黒か灰色か、ともかく白でなかったのだから、その210万ドルは如何なるのかなあ」

「議会の証言の席では、例の低音でマウルーニー独自の『正論』を響かせ、大向こうのマウルーニー ファンを唸らせたが、確かに雄弁、謙虚、それにユーモアとペーソス、怒りと悔恨を取混ぜ、『家族の悲嘆』も訴えてみせたところは名優のパフォーマンスだった。 しかし世論調査によると、シュライバーを信じる人が30%、マウルーニーを信じるのは10%で、残りは『判らない』という結果が出ている」

「これからクリスマスだ。 そして正月だ。 シュライバーとしては、ドイツに引き渡されれば一生牢獄から出られないだろうから、たとえ1週間でも1カ月でもカナダに居られれば、その分だけ勝ちだ。 手錠をはめられ議会に出頭させられたシュライバーの好運を祈る判官贔屓もカナダでも結構いるだろうから、これも『一寸先は闇』なのかな」

「『メリー クリスマス』の後、年が明けたらアクト スリー、ドラマの第三幕が始まるだろうから、新年も波浪含みの船出だ」

(了)

Saturday, December 01, 2007

オタワのドラマ第一幕 (2007/112/01)

(2007/12/01)

『オタワのドラマ第一幕』

「間もなくクリスマスだから、いつもは野次と怒号が飛び交うオタワの議会も、少しは静かになるかと思ったのだが、今度は二昔前にカナダの首相だったマウルーニー氏と政商シュライバー氏をめぐる虚々実々のドラマが演出されてサイレントナイトどころではなくなった」

「1984年から9年間進歩保守党政権の首相だったマウルーニー氏が1993年引退する時、貯えがゼロだったというんだね。 頼るは年金の10万ドルだけ。 さあモントリオールに買った豪邸の借金はどうなる。 そこでマウルーニー元首相の補佐官がドイツ系カナダ人の政商シュライバー氏に助けを求めた。 シュライバー氏はヨーロッパからカナダへエアバス導入を図った際2000万ドルの潤滑油的資金を受取っている。 そこで『よし判った』とマウルーニー氏にカナダやスイスのホテルで10万ドルの現金が入った封筒を、3回にわたって手渡したというんだね」

「しかしそれが表に出てはまずいと思ったマウルーニー氏は、シュライバー氏に『自分は潔白だ』と証明する手紙を書かせようとした。 ところがシュライバー氏は渋る。 マウルーニー氏は受取った30万ドルについては後日税金を払ったものの、これがエアバスからのコミッションから出たとあってはまずいんだね」

「その間、ドイツ政府は、シュライバー氏を脱税と賄賂を理由に、カナダ政府に同氏の身柄引渡しを求めてきていた。 その駆引きは8年以上続いているのだが、ここへきてマウルーニー氏だけでなく、現首相のハーパー氏の名前も浮かび上がってきた。 それまでハーパー首相は、マウルーニー・シュライバー問題については野党の徹底解明の要求を斥けてきたのだが、自分の名前が絡んできたのでは一蹴もできない。 一転して徹底解明を約束した」

「しかし海千山千のシュライバー氏が証言台に座ったのでは、保守党としても時限爆弾を抱えたようなもの。 そこで、ハーパー首相の明言にも拘わらず、ニコルソン法相は、シュライバー氏を早くドイツに引渡したいと煮え切らない態度で。 結局裁判所が引渡し延長を認めて、爆弾は不発のまま今暫く温存の状態だ」

「しかし保守党政権は少数与党。 磐石というわけにはいかない。 それに保守勢力の合同で出来た政党だから、中には進歩保守党のマウルーニーに反感を持つグループもある。 リフォーム、アライアンスの御旗を掲げて飛び出した分子も同居しているが、不満が消えたわけではないから一枚岩とは言えない」

「ハーパー首相も今はマウルーニー氏を先達として仰いでいるが、元は進歩保守党にあきたらなかった旗手の先駆け。 それに保守党の副党首で元進歩保守党党首のピーター・マッケイ国防相は父親のエルマー・マッケイ氏がこの問題に深く関わっていたことから、立場も微妙。 今まで正義の騎士をもって任じてきたマウルーニー氏も足許が怪しくなってきた。 今後証言台に立てば『ノーコメント』で通すわけにはいかない。 このドラマも回り舞台が次の場面を舞台の正面にもってくれば、第ニ幕はどんな展開になるだろうか」

(了)