Aさんへ
コンピューターの時代にあって、珍しく貴重な封書を頂戴したので、「何事ならん」と封をあけたのですが、そうでしたか。 お手許のコンピューターの修理が手間取っているとのこと。 心からご同情申し上げます。
どうして日本の一流メーカーの製品が故障するのでしょうね。 そういえば、インターネットの新聞の見出しに、アメリカの自動車団体が、品質の点では、韓国の現代の車がトヨタを抜いて、高く評価されたとありました。 一位はポルシェ、二位がトヨタのレクサス、三位が現代で、トヨタの他の機種は四位。 ホンダは六位とのこと。
こちらの電化製品の店では、横長のテレビも、なじみの薄い韓国製品と中国製品が日本の東芝やパナソニックを抑えて、目立つところに陳列してあります。
そこで思い出したのは、1969年ロンドンで、初めて車を買った時のことです。 まだソニーやパナソニックが怒涛のように英国市場に雪崩込むちょっと前でしたが、当時も在英の日本人達も、イギリス製品なら上等舶来と崇拝していました。 イギリスかぶれの私もそうでした。 ですから知り合いの日本人の車も当然オースティンとかその他のイギリス製。 戦後の日産は、オースティンと技術提携して、本格的な乗用車生産に乗り出していましたからね。
ロンドンのディーラーをのぞいてみると、ショールームの一隅に、トヨタのコロナがありました。 日本では既にマーク2が走っていたのですが、そこにあったのは、それより旧式のダックスタイルです。 家族と相談してそれを買ったわけですが、日本人同僚に話すと、「アッと驚く為五郎」という反応が返ってきました。 為五郎とは何のことか判らないのですが、意外な選択と受け取られたのでしょう。 日本製品は「安かろう悪かろう」という先入感がまだ日本人にも沁み込んでいたのでしょう。 その頃は、日本大使館からの要望として、「在留邦人はすべからくテーブルクロスのかかっレストランで食事すべし」というお達しがあったとか、嘘の様な話も聞きました。
しかし、その直後、1970年頃から海外旅行が自由化され、円高も手伝って、ロンドンにも「オペア」と称するお手伝い志望の大和撫子のお嬢さん達がドッと押寄せました。 そしてピカデリーサーカスのキューピッド像の辺りにたむろするようになりました。
それにドブ鼠色の背広に、眼鏡にカメラの日本人。 それは私自身の姿でもありましたが、さらに加えて肩から「キンキ・ニッポン・ツーリスト」のショルダーバッグをさげている人もいます。 ロンドンっ子達は「なんじゃぁ、ありゃぁ」と目を剥くのですが、近鉄の人も「キンキ」の意味するところは昔から十分ご存知だった筈。 まさか今でも同じバッグを客に配っているのではないでしょうね。 長い間の渡航禁制がとれて、海外に繰り出した日本人の群れをみて、イギリス人は「まるでレミングのようだ」と驚いていました。
話が逸れましたが、コロナに決めた後で、そのディーラーのマネジャーが、「実は、私も同じ車を使っている。 とても調子がよい。 それに比べて、このイギリスの車はどうだ。 見てくれはいいが、中味はこの通りスカスカだ」とボンネットを開けて空きの多いエンジン廻りを見せるのでした。
自分が持っているのなら、早くそれを言えば、買い手の気持にも弾みがつくのにと思ったのですが、それを敢えて言わないところが、古いイギリス人気質なんでしょうか。 それとも「客が自分の気にいれば、買わせてやろう」という、ズボンのポケットに手を突っ込んだままの、当時のイギリス的セールスの延長だったのでしょうか。
それから暫くして、コロナを整備工場に持って行ったのですが、そこにいた中年のイギリス人の客が、「その車はどうかね」と話し掛けてきました。 「まあまあだ」と応えると、「私の車はイギリス製だが、この頃の英国車は、どうして故障ばかりするのだろう。 昔はイギリス製というと、信頼がおけて、こんなことは無かったものだが。 私もこれからは日本車に切り替えることにするよ」と憮然とした表情で語っていました。
その頃です。 イギリス議会で、議員が「メード・イン・ジャパン」について発言していました。 「昔は、日本製というと、品質が悪いから、消費者が用心するように『メード・イン・ジャパン』の表示をつけさせたものだ。 ところが今は『メード・イン・ジャパン』というと、品質が良い証拠だと消費者がこぞって買うから、これからはその表示を止めさせるようにしよう」と。
カナダでも、ついこの間までは、韓国製というと、「お粗末」の代名詞だったものですが、この頃はコンピューターに詳しい日本人でも、「”サムスング”、これが今世界で一番良いモニターだ」と迷わず即座に買います。
韓国の「日本に追い付き追い越せ」は意外に早く実現したのですね。
来月はポーランドのアウシュヴィッツ詣でですか。 以前のサイパンの SUICIDE CLIFFの検証といい、本当にスゴイことですね。 貴兄のたくましい精神力と体力、そして経済力と、その精気に満ちた生き方にはつくづく頭が下がります。 これがまた紀行文やエッセーとなって文字に文章に再生されることでしょう。
奥様の健康が少しずつ上向いているとうかがい、喜んでいます。 貴兄も来月の旅行にそなえて、英気を養ってください。
シゲより (06-06-08)
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